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平成17年冬号

・一冊の絵本から
・紫玄ひつじさん 児童書『おじいさんと青い外套』を出版
・図書館伊万里塾に参加して 10月塾 11月塾
・図書館伊万里塾 12月塾のお知らせ
・「えほんにっき」をつけてみませんか
・寄贈ありがとうございます

★ 1面
一冊の絵本から

小春日和が続くときに雪の話など似つかわしくないけれど、最近こんな話を聞きました。

 ボランティアグループ「てんとう虫の家」が『ゆきのひ』という布の絵本を制作したときのことです。この絵本はアメリカの絵本作家・エズラ・ジャック・キーツの作品で、主人公は黒人の少年です。会員のMさんは自宅で作品を作りながら家族とこんな会話を交わされたそうです。
 「キーツの絵本には黒人の少年がよく出てくるのよ」
 「これは人種差別について問題提起をした絵本かしら」
 「それに雪――雪は全てのものに平等に降り積もって真っ白にしてくれるでしょう」
 「そういえば、尋常小学校の頃、雪の詩を暗唱したよ。もう忘れてしまったけどね」
 針仕事に精を出しながら、作品を鑑賞し、思い出話の中から家族の人生の断片を知り共感をするひと時をもったMさんの家庭の温かい話です。

 ところで、世界の絵本作家について書かれた本には、キーツの『ゆきのひ』について次のように記した個所があります。<この絵本を子どもに読んでやった母親は、キーツにこう書いてよこした。「黒人の子どもたちにとって、彼ら自身についての本を見ることがとても大切であるように、黒人でない子どもたちが、青い目よりもほかの目を通して、幼年時代の普遍的な経験を見ることも、やはり大事なことだと思います」(「絵本図書館」より)>
 ものごとを両面から見て考えることはいつの時代にも大切なことであります。現代は主権を持った主体的な市民の時代ですが、情報が一面的では民主主義は成り立ちません。昔、中国の秦の始皇帝は思想弾圧の手段として、医薬や農事以外の本を焼き捨てるという焚書を行いました。戦前の日本でも思想や出版の統制が行われました。図書館は知る機会を提供する、つまり民主主義を機能させる機関ですが、「ゆきのひ」という一冊の絵本を通して図書館の役割の重大さを深く考えた一日でした。


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★ 2面
紫玄ひつじさん(新天町出身)
 児童書『おじいさんと青い外套』を出版


 伊万里市出身の作家、紫玄(しげん)ひつじさんが初めての著作となる児童書を出版されました。題名は『おじいさんと青い外套』です。主人公の少年と職人気質の祖父との交流を通じて「仕事とは何か」を描いています。この本は市民の皆さんへと図書館に寄贈していただきました。また、メッセージもいただきましたので、こちらに掲載いたします。




 この作品は小学校中・高学年以上向けに書いた本なのですが、少し難しい用語を使っています。それは小さいお子さんには、お母さんと一緒に読んで欲しいという思いがあるからです。難しい言葉に出会ったら、お母さんに聞いたり、一緒に考えたり、辞書を二人で引いてみたり、親子のコミュニケーションの場を提供したいという意図で書きました。
 そして読み聞かせを通じて、子育てをしているお母さんやお父さんにもメッセージをたくさん文章の中に込めています。小学生になれば好奇心も出てきます。両親に反抗もしたくなります。それは自分で考える力がついてきているからです。最初に親の意見を押しつけるのではなく、先に子どもの意見を子どもの目線で真剣に聞いてあげることが最も大切なことなのです。
 当然、常識(一般社会)は親の方があります。しかし、子どもは子どもなりに考えて行動(子ども社会)をしているのです。それを理由も聞かずに否定したら、親に話しても無駄だと思うようになってしまいます。
 なぜそれがいけない行為なのか。なぜ自分が叱られているのか。なぜ親から反対されているのか。子どもの言い訳を聞いてあげながら、一般社会のルールを分かりやすい言葉で話してあげてください。「○○君が同じ立場だったらどう思う?」と、子どもに考える場を与え、それから子どもに納得させることです。
 なぜいけない行為なのかの「なぜ」が重要なポイントではないでしょうか。
 この作品の中では、トーマス(主人公)がおじいさんから、「仕立て職人のおじいさんの店を見に行ってきなさい」と言われるシーンがあります。子ども自身に「なぜ」を発見させることは大きな経験になります。その意味でもこのシーンの感想を子どもに聞いてみるのもいいでしょう。
 他にも「セシルをどう思う?」と、お母さんが聞いてみるなど、登場人物の感想を聞いてみて下さい。思いもよらない意外な答えが返ってくるかも知れません。
 そして重要なのは、その答えに至った理由も聞いてみることです。お母さんが知らなかったお子さんの新しい個性や優しさを発見できるかもしれませんよ。

紫玄 ひつじ


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★ 3面・4面(1)
図書館伊万里塾に参加して
 10月塾 10月15日  11月塾 11月3日
 

 図書館伊万里塾10月塾は、私の4年生の時の担任、川副幸子先生でしたので、とても楽しみにしていました。今でもそうですが、あの張りのある声ときりっとした眼差しで、明るい楽しい学級をつくってくださいました。
 「私と図書館」というタイトルで一語一語噛みしめるようなゆったりとしたリズムでお話が始まりました。『警戒警報・敵機襲来・学徒動員』と戦争への道を突き進んでいた日本のあの暗い時代が先生の青春時代と重なって、まさに「灰色の青春」であったそうです。今、やっと本に親しめる時がきて「80にして青春をしたい」とすばらしい結びの言葉で終わられました。
 先生はご用意しておられたと思うのですが、随分と話を端折られて、心に残った本などのことをお聞きしたかったのですが、もう少し時間があったらと残念に思いました。先生には、ますますお元気でボランティアや読書にお励みになられますようお祈り申し上げます。
 最近は体験不足やパソコン・携帯電話の普及で人や自然との触れ合いが減って、自分の思いを伝えたり、他へ思いを巡らすコミュニケーション力が低下しています。美智子皇后が『橋をかける』という本の中で「読書は私に根っこを与え、翼をくれました。この根っこと翼は私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていく時に、大きな助けとなってくれました」と語っておられます。読書がいかに大切かが伝わってきます。
 図書館は本を探しに、本との出会いを求めて、またいろいろな企画の中から情報を得にと、楽しい居心地の良い場所であることの幸せを感じております。

円田 洋子(脇田町)




 ある日の土曜日、図書館に借りた本を返しにいきました。その時、職員の方が「古賀さん、万華鏡を見ませんか」と声をかけられ、半信半疑で小さな望遠鏡のようなものを眺めました。眺めてみると、目が覚めるようにきれいな幾何学模様の画面が見えました。私は我を忘れ、時間が経つのも忘れて見続けました。見終わって、小学校の工作の時間に3枚のガラス片を三角に組み合わせて桜の花びらを見て友達と楽しんだことを、懐かしく思い出しました。
 伊万里市民図書館が開館10周年を迎えての記念事業として、図書館伊万里塾が開催されています。10月塾として有田焼万華鏡を開発された有田町在住の石川慶蔵さんのスライドを使っての興味深い講演を聞き、多大の感銘を受けました。スクリーンに映し出される6角の画面の千変万化の美しさを改めて感じました。「伊万里市民図書館が無ければ万華鏡は生まれなかった」という言葉には感動しました。
 低迷する有田陶業界の前途に光明を灯す有田焼万華鏡を1人でも多く手にされて楽しいひとときを過ごされるようにと帰り途、心から祈念してやみませんでした。

古賀 千代二(山代町)



「寺田さんって誰だ?」
寺田芳朗さんは伊万里市民図書館の設計者である。
「寺田さんは乱暴者である。」
「図書館作りは格闘技だ」と言って、魅力的な図書館作りを進めるため発注者と格闘し、「なぜ図書館が必要なんですか?」などと意地悪な質問をする。
「寺田さんは文学者である。」
図書館の必要性を説くために、自分の言葉を探している。私たちにも市民図書館の必要性を説くための自分の言葉を探させようとしている。
「寺田さんはお節介やきである。」
建物が完成すれば設計者とはサヨウナラ。でも寺田さんは10年たった今でも市民図書館を訪ね、市民図書館の今を心配し、将来を心配し、あれやこれやと気を揉んでいる。
「寺田さんは物知りである。」
日本中(世界中かな?)の図書館がどうなっているか?どこへ進もうとしているのか知っている。伊万里のことも良く知っている。
「寺田さんは情熱家である。」
しまった。質問の時に聞けば良かった。「寺田さん、あなたをここまで走らせる原動力は何ですか?」



 伊万里に縁もゆかりも無かった私が来て18年、伊万里で生まれた子供が2人、家族で週末の図書館通い。今でもこの地にとどまっていられるのは図書館のおかげかもしれない。天使のような笑顔で悪魔のように仕事をするスタッフの皆さんに感謝。市民図書館を支えるボランティアの方々に感謝。そしてこの素晴らしい図書館を設計した寺田さんに感謝です。いつか、1人の利用者として私の言葉で図書館の必要性について説かなければと思っています。

船井 向洋(立花町)



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★ 4面(2)
図書館伊万里塾 12月塾

暉峻淑子さん講演会
 演題「ほんとうの豊かさを求めて」

 日時 平成17年12月3日(土)  13:30~15:00

 場所 伊万里市民図書館 ホール


◆プロフィール
1928年大阪府生まれ。生活経済学者。
1963年法政大学大学院の生活経済学の博士課程終了。その後は政治、経済、教育、福祉など様々な問題について発言を続け、近年ではユーゴスラビア難民を支援するNGOの活動に精力的に携わるとともに、憲法と教育基本法を守る活動に力を注がれています。
 また、お母様の実家が伊万里ということで、思い出話も聞かせていただけるのではないでしょうか。


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★ 4面(3)
「えほんにっき」を付けてみませんか

 「赤ちゃんの頃から一緒に絵本を読んでいたけど、何を読んだか忘れてしまった」という声を聞き、図書館で「えほんにっき」ノートを作成しました。 
子どもデスクにて無料で配布しています。
数に限りがありますので、お早めにどうぞ。


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★ 4面(4)
寄贈 ありがとうございます

(敬称略)
・紫玄ひつじ
・伊万里市日中友好協会
・前田四三
・中村悠美子
・小島由紀子
・前田信義
・松尾芳樹
・犬塚八重子
・羽柴節子
・樋渡たみ子
・藤原純子
・オリタデザイン研究所
・弘井得二郎
・大平栄一郎)
・九州農政局企画調整室
・千葉 治



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